マンダウエ市役所裏。
物置のような弁護士事務所が点在する。
日本人の思い描くそれとは遠くかけ離れている。
日本で弁護士のお世話になる機会は一生に一度あるかないかというイメージだがフィリピン生活ではまるでエステや美容室のように頻繁に弁護士事務所を利用する。
怪しさ満点の国ではお互いが疑心暗鬼に生きている。
何をやるにもいちいち弁護士を通じて公文書化しなければならない。
ティムの行きつけの弁護士。
歳の頃は55歳くらいか。
フィリピン弁護士にしては珍しく虚栄心が全く見られない。
書類が出来上がるまでに私はいつものように近所を散策してみた。
エルニーニョ真っ最中のセブは一瞬で溶けるような暑さ。
1日何本も水が必要だ。
私はその辺のサリサリストアーで喉を潤す事にした。
横一列にもくもくと座る小学生4名。
その空気感はまるで新橋の居酒屋だ。
「あのぉ、水を1本くださいな」
黄色い服のおばさんが無言で冷蔵庫の水を取りにいった。
「みんなで勉強してんの?」
左から二番目のタンボック女の子が無言で頷いた。
子供にしておくのは惜しい貫禄だ。
算数の計算問題を解いている。
125.3×12みたいな小数点付きの計算だった。
「まさかイカウが勉強教えてるの?」
黄色い服のおばさんは大船に乗せたような顔でゆっくり頷いた。
「これって無料?」
「まさか!3000ペソオンリー」
黄色い服のおばさんは始めて口をきいた。
オンリーと言われてもローカル層のお父さんの給料はきっと8000~10000ペソ。
そこから子供の寺子屋代に3000ペソを出すとはなんとも尊い。
「これって毎日やってるの?」
「月曜日~金曜日の午後3時~5時まで」
今セブは夏休み真っ最中。
自分も仲間に入りたくなった。
小学生に混じって勉強したジャングル時代が急に懐かしくなった。
格安で日本語の子供クラスでもやるかな。
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