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最後の欲望

投稿日:2016年6月16日 更新日:

masuzoe


 

1993年私は目黒に本社のある某ゼネコンへ就職した。

バブル崩壊直後だったが公共事業に関しては全くと言ってよいほど陰りは見えず、営業経費という名目のオカニで無尽蔵な飲み会が行われていた時代だった。

私は博多に支店のある九州支店という所に配属された。

全国でも九州支店は売上も高く豊富な営業経費が認められていたので役職のある部長以上は毎晩中洲のすし屋から始まって最低4件はスナックを梯子するのが慣例。

私のような若手は訳の分からない不毛な飲み会に毎晩お供させられた。

一切自分のオカニは使わないので給料は貯まる一方だった。

現場の所長ともなると家が建つ。

海にテトラポット100トン沈める見積もりを1000と書けばよいのだ。

資材課の先輩が500万円する日産GTRを買った。

噂によるとセメント会社の社長からプレゼントされたらしい。

500万円のプレゼントが5000万円に化ければ立派な投資だろう。

支店長の部屋はまるで会員制の高級倶楽部。

中洲のママから送られた高そうなランの花がいつも飾られ、支店長車は愛人の送迎が主な役割。

経理担当だった私は飲食店やスナックの領収書や請求書を整理するし伝票を打つ。

飲み食いの激しい営業部は月にかるく100万円以上の飲食代となっていた。

発注先であるゼネコンがそうなので発注元の国や県等公共側はもっと凄いんじゃないかなと思ったりした。

 

やり玉にあげられ辞任する事になった東京都知事。

公用車で湯河原の別荘へ通う。

もちろん悪い事だが、かなり普通だ。

きっと愛人とかも隣に乗せていただろう。

それが日本社会の健全な姿だった。

やりたい放題具合を下に見せて頑張らせる日本の伝統の技だ。

誰かそれに対し何か言おうものなら

「悔しかったら知事になってみろ」

それが日本経済を激進させて来たジャパンスピリッツだった。

公私混同は日本のエネルギー。

汚い奴は仕事もできる。

それが昭和から平成初期の事実だった。

昨年5月田園都市線の高級ゲストルームへ1週間程滞在したが、退出するときにマンション管理の方からこう言われた。

「もう日本はダメですよ」

「皆さんそうおっしゃいますね」

「ここにはもう欲望が無い」

 

昔は舛添さんが沢山いた。

そんな欲望に満ちた人間達が今の日本の地位を作って来た。

日本は安全で清潔でサービス良くてこんな素晴らしい国?

鼻高々に日本を自慢する。

そんな恩恵にさんざんあやかっておきながら、それを作って来た欲望に石をなげつける滑稽さかな。

今まさに最後の欲望が消滅しようとしている。

 

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モトボサツ

2年のセブ島ジャングル生活を経てビサヤ語を習得。その後タガログ語も同時に習得し、最後は英語という逆ばりメソッド。現在生命保険、医療保険コンサルおよびビジネス通訳を兼ねる。元セブの大学にて3年間ストリート系日本語教師の経験あり。

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