微妙な日本と親としての焦り
今までティムを連れてフィリピンから日本へ3度行ったが、旅が終わりセブへ向かう岐路で日本に住みたいと思うかと聞いてみた。
「住むにはエキサイティングじゃないし、たまにツーリストとして滞在して楽しむ国だね」
と生意気な答えが返ってきたが、私も実は同感だ。
ツーリストとしてなんの責務もない状態で滞在する日本はホントに最高!
コンビニ、レストラン、交通機関、ホテルのサービスはもちろん、無料で使える公共の公園もゴミ一つ落ちていない。
それはひとえに、個人が必要以上に犠牲となる日本の社会構造。
そのしわ寄せはうつ病や自ら自分の存在を消す行為という形で濃厚に具現化され皺寄せとなっている。
どうせたった100年すら生きられない人間という存在のはかなさ。
太く短く自己満足の高い人生のほうがいいに決まっている。
しかし、自分はそれでよいのだが、子供の教育を考えるとフィリピンという楽しいだけの国で子供を育てるのが怖い。
日本人の子が日本人として普通に育ち、10歳を超えたあたりでフィリピンに移住して現地の学校で学ぶ意義は大きい。
しかし、うちのカワイイちゃんはいまのところ普通のフィリピン人としてスクスクと育っている。
親としての焦りが常に脳裏にざわめく。
這い上がれない国フィリピン。
大勢の貧民が一部の富裕層を養う構造ではヒエラルキー社会のやや中盤から底辺にロックオンされ、アホな既得権に遊ぶ富裕層を太らせるだけの一部として生きてしまう可能性が高い。
セブの大学で3年間働いてみて確信を得たことは、フィリピンという国の最大の問題は教育。
英語が公用語になり、世界の家政婦と呼ばれる国では1/2+1/3が解けない大学生が8割以上。
現地なりの富裕層の行く学校は無駄に学費が高く、だから凄いかといえばそこは急にフィリピンクオリティ。
知り合いの日本人の子供がうちの近所にある高級スクールに通っているのだが、ろくな話を聞かない。
「ボサツさん、学費高いのに学校の先生が生徒の物とか盗むんですよ」
もう今更そんな事聞いても全然驚かない。
北斗の拳の世界のように盗まれた奴は単純に負け組だ。
学校は教育を受ける場所ではなく、サバイバル養成所だ。
日本かフィリピンの二択だと単純に教育面は日本に軍配があがるのは歴然としている。
ただ、日本の大学は日本の社会で生きるための通過儀礼的なものであり、そこで生きるための戦闘力を育むという場所ではない。
日本が沈む様子を海外から眺めている状況の中で、私を育ててくれた日本という誇らしい国へ教育という名のもと連れて行くのが良いのか揺らぐ自分がいるのは否めない。
若者が日本を捨てる表向きな理由
性病祭りでホットなセブだが、真面目に将来を考え英語留学に取り組む日本の若者と会う機会が増えた。
私の大学時代には優秀な人間は弁護士か会計士という感じでお互いに刺激し合うための勉強会サークルが盛んだったのだが、少子高齢化が進み、GDPの分母コンテンツが老朽化してきた今では、分子にいる若い日本人は条件の良いところへ逃げ出すしかなくなっている。
中国のGDPの圧倒的な伸びを誇るための動画だが、私には日本の沈みゆく様子しか見えていない。
弁護士や公認会計士をはじめ、かつては勝ち組と言われた「ガッツリ食える資格」を持った20代の若い有能な人材とセブで出会う機会が増えた。
そういった若者にとってセブは英語留学の地という単なるストップオーバーの通過点であり、シンガポールやタイなど、日本の何倍も稼げるところを目指している。
若者が日本を捨てる本当の理由
Tall trees catch much wind.
「高い木は多くの風を受ける」
若く有能な日本人が日本を捨てた男達になろうとしている理由はオカニだけの問題ではない。
出る杭は打たれる日本の社会がどうしても我慢できない。
ゆとり教育がパンドラの箱をあけてしまった?
「無駄に行われる上司主催のミーティングが嫌すぎ」(広告代理店勤務20代男性)
「上司と飲み会に行きたくない」(商社勤務30代男性)
「残業や休日出勤で自分の時間が持てない」(金融機関勤務20代女性)
「部長のセクハラが我慢できない」(アパレルメーカー勤務20代女性)
謎の年功序列制度が機能し、給料が自動的に上がり、国自体がグングン成長していた1990年代迄は無駄な残業も上司のセクハラの社会のバランスの一部だったのだが、個人主義というパンドラの箱の蓋が開いてしまった現在は、自己犠牲なんてまっぴらごめん。
自分こそが人生の主人公であるべきということに目覚める若者達。
自己犠牲が日本経済を支えてきたのは自己犠牲という概念すらないフィリピンを見ていれば明らかだ。
成長や希望のない苦しいだけの日本という牢獄からの脱出したいのが若者が日本を捨てたい本当の理由のように思える。
セブは国際人生交差点の地
「日本を捨てた男達」はフィリピンボケして沈没した困窮法人の物語だけではなく、優秀な日本の若者もそのカテゴリーに参入している。
そして、弁護士や会計士など年収の高い業界から納められる税金は他国のために収められる。
日本のオカニで育った英知が外国人のために使われるのだ。
その代わり、労働者不足問題を解消するために頭数だけ揃えようと9×9さえ知らない粗悪な外国人を輸入する事しかできない日本は致命的。
結局労働者不足を補う名目でやってくる外国人は消えた若い日本人の代行にはならず、日本が日本国民のために培ったシステムの最後の濃い沈殿物を吸い上げに来ているキラーだ。
日本を去った優秀な若者と、日本へ行くために鼻息荒くして日本語を勉強しているセブの教育習生。
まさに「王子と乞食」のシーンを彷彿させる人生のエクスチェンジを目の当たりにしながら日本という国の最後のシーンを見届けようとしている。
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