ほろ酔いのアルコイ
S子とはかつてないほどプラトニックな関係性を保っていた。
ガールフレンドと公言してよいのかどうかさえ微妙な距離。
ある日、彼女から突然テキストがきた。
「あなたはもう私の人生の一部になっている」
ここ数年、夜を共にした女性は女房で滞在した所が全て家という風来坊の人生を送っていたのだが、その宣言に重い十字架を背負わされたような束縛感を感じてしまった。
その週末彼女の事務所の社員旅行に強引に誘われ、アルコイという南部のリゾート地へ小旅行へ出かけた。
フィリピンらしく、1つのベッドに二人で寝ることになっていた。
私と彼女は選択の余地もなく肌を寄せ合わせる運命となったのだ。
近くの市場で食材を買い込みバーベキュー大会。
飲み物はやはりレッドホースだ。
バーベキュー大会が終わり私は少し酔っぱらってしまった。
昔からレッドホースを飲むと途端に記憶が飛んでしまう体質だ。
コテージを下った所に小さな洞窟があり、酔い覚ましに下ったら彼女がついて来た。
膝まで海に使った状態でマウスツーマウスの儀式が行われた。
今夜とうとう俺は彼女の物になってしまうのかと横綱の断髪式のような面持ちである種の覚悟を決めた。
夜10時頃二人でベッドに入った。
彼女は私の耳元でこう囁いた。
「Akong totoi ba gamay kaayo」
私のパイ〇ツってめっちゃ小さいんだよ
その言葉に酔いが一気に冷めた気がした。
アンザニで食事をした時に小さいのは確認済だったが、本人からの自己申告がとても切なかった。
きっと胸が超小さいという劣等感をバネに貧しいながらも大学を卒業して会計士になったのだろう。
ここは笑うところだが、彼女は一瞬怯えたような表情をした。
私の調査によるとフィリピン人男性のサイズは一般的に小さく、日本人の一般的サイズでもダコカーヨとなるのだ。
私はセブでは珍しいXLサイズの防護服をトマホークに着せてくれと頼んだが、ワコカバロ(分からない)と拒否された。
今でこそドラッグストアに行けばキャンディーと並んで各種防護服が売っているが、10年前ではASフォーチュナのローズファーマシーで見かけない特殊商品だった。
恐らくそれまで一度も使ったことがない可能性がある。
中途半端なカトリック国の弊害だ。
素人のフィリピーナは日本人の女性のように大きな声を出さない。
本当かどうか分からないが、時々「ラミ」とつぶやく程度なのだ。
大家族で密接して暮らしているので夜に声を出せないという事情があるのだろうが、そういえばウクライナ人の彼女も声をあまり出さなかった。
彼女が自己申告した以上に胸はまな板だったが、小学校の頃、親戚のオジサンが言っていたあのことを思い出していた。
「貧乳は頭の良かとばい」
それ以来私は貧乳の女性を発見するたびに、賢いんだろうなと畏敬の念を持って丁重に接するようになった。
ツイッターでアンケートを取ってみると意外にも頭の良さとサイズは関係ないという意見が圧倒的に多かった。
やはり長崎県特有の都市伝説なのだろうか?
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