つい先日、あるフィリピン人と話をしていた時にまた言われた。
「日本人はビザなしでどこへでも行けるからいいよね」
これはフィリピンあるある級の定番なのだが、一番最初にこれを聞いた時にはこう思った。
しかし、フィリピンで生活するにつれ分かって来た。
特にフィリピン人は出稼ぎ大国なので自国で人生を送るという発想が薄い。
つまりビザなしで「どの国にでも行って働けるからいいよね」と言いたいのだ。
もう10年前位になるが、私が韓国系の語学学校へ居候をしていた時の話。
「次に生まれ変わるとしたらどの国に生まれたい?」
たまたまジョインした6名位のグループクラスでトピックがこれだった。
日本人だったらあまり触れないような話題だが、フィリピン人の頭の中はだいたいこんな思考が流れている。
そこには4名の韓国人とタイ人の女性が1名入っていた。
そのタイ人はオカニモチ(お金持ち)の家の娘らしく、タイは毎日外食でお手伝いさんもいて人も礼儀正しく優しいからタイ最高だと言っていた。
しかし、韓国人の留学生は違った。
誰一人として韓国に生まれたいと言った人はいなかった。
そもそも留学の目的は英語力を上げてオーストラリアへの移住だったのだ。
ちなみに私はこういった。
フィリピン人の富裕層の家に生まれたい。
皆爆笑していたが、フィリピン人講師だけは深くうなずいていた。
私にとってフィリピン生活の中で忘れられない衝撃的なシーンがある。
8年程前に故郷長崎へ帰省し、フィリピンへ戻ってくるときのことだった。
空港へ降り立ち、外国人用の審査ゲートには相変わらず長蛇の列が出来ていた。
一方フィリピン人向けのゲートはスカスカ。
私の前にフィリピン人女性が並んでいたので不思議だった。
歳の頃はそうさのぉ40歳くらいか。
身長150センチ位で小太りの典型的タイプだ。
空港の職員がその女性へアプローチした。
「マム、フィリピン人用のゲートが空いてるからそっちへどうぞ」
彼女はイラっとした感情丸出しでこう言った。
「私はアメリカンレジデンスなのよ」
フィリピン訛りの英語なので100%フィリピン人だ。
空港の職員はそれでもダイジュブ(大丈夫)といって彼女を長蛇の列から外してあげようとしたが、彼女はイライラした様子で完全無視。
つまり、彼女は外国人の列に並ぶのが夢だったのだ。
私は後ろで彼女を眺めながら元カノT(ティムじゃない)の事を思い出した。
彼女は子供の頃から外国人の奥さんになって外国に住んで外国語を話して生活するというのが夢だったらしい。
ガイサノとかで外国人の旦那と奥さんを見るとその世界にめちゃくちゃ憧れたと言っていた。
それは彼女だけでなく、Cクラス以下の層は基本的にフィリピン人という枠を脱出したがっている。
だからアメリカに親戚がいるとかこちらが聞いてもいないことを自ら盛んにコマーシャルしてくるのだ。
私の前にいたフィリピン人女性も地獄の長蛇列であってもそこが外国人枠ならそれ自体がきっと幸せなのだ。
まあ、ある種の変態だ。
国が発展すれば国内に需要が生まれ、海外へ出なくても生活できるからフィリピン人のマインドが変わると誰かが言っていたが、まだまだそんな気配は見られない。
英語を公用語にしている限りこのスパイラルは永遠に続くのだろう。
この修羅の国にわざわざ日本からやってきて12年も住んでいるモトボサツは彼等からするとかなり奇異な存在に映っているはずだ。
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