日本vsフィリピン

南国生活を夢見てセブ島へやって来たシニア夫婦は3年以内に逃げ帰る

投稿日:2020年11月21日 更新日:

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憧れの南国生活と歪んだ情報

なぜか人間は南の島でのんびり暮らすことを永遠に憧れるものだ。

宝くじ当たったら南の島で。。。

定年退職後は南の島で。。。

その象徴としてハワイがあり、私の祖母も旅行で初めて訪れた際、カラッとした気候が大変気に入り、いつか移住したいと切望していた。

私の住むセブ島も定年退職後に夢の南国生活を実現させ移住してくるシニア夫婦が多い。

しかし、3年以内にほぼ100%日本へ逃げ帰ってしまう。

世間ではそういう人たちの事を「情弱「と揶揄する傾向にあるが、私はそう思えない。

これまでストレスで押しつぶされそうな日本社会で必死に闘い抜き、いつか南国でストレスフリーなスローライフを送るというゴールがあったからこそ頑張れた。

インターネットで溢れる情報の隅から隅まで調べ尽くすことは難しく、南国移住を誘うサイトばかりがSEOの操作で上位検索される。

これまで手取りで50万円以上あった人がいきなり年金生活となると闇雲に不安だろう。

退職金を含めた貯蓄を上手く運用しながら南国生活を満喫できたら最高だ。

特にセブの場合、島全体がまるで5星のリゾートホテルというイメージがあり、まさに夢の南国生活とタグ付けされる。

 

 

定年退職後のシニア夫婦の入口はリタイヤメントビザやクオータビザと投資用のコンドミニアムを抱き合わせ販売情報。

販売者のターゲットは正に南国生活を夢見る退職金を受け取ったばかりのウハウハ世代。

ゴミ一つない天国のような白い砂浜にヤシの葉が穏やかになびく。

生きながら天国に行ける感覚だ。

そこで想定利回りが5~7%の計算書を見せる。

日本の銀行のゼロ金利に比べると神だ。

コンドミニアムという響きにゴージャス感が溢れる。

日本のマンションの事を海外ではコンドミニアムと呼ぶのだが、ハワイのイメージからか贅を極める想像が働く。

プール付きのコンドミニアムのオーナーになれた上に素晴らしい利回りが想定される。

また物価が上昇しているフィリピンでは資産価値もグングン上がるというプレゼンテーションを受ける。

日本という先進国でそれなりの仕事をしてきた人でも一歩日本を出てしまうと判断力や戦闘力は一気に無力化してしまうのだ。

10年程前はメイドとドライバーのいる殿様生活がたった月10万円で実現するという情報も盛んに出ていた。

それを覆す情報が少なかった。

狭いフィリピンの日本人社会では横のつながりによるシガラミが多かれ少なかれ存在し、フィリピン生活の闇の部分や公表されにくい。

 

高かろう悪かろうの医療

 

せっかくフィリピンへ移住した日本人シニア夫婦が3年以内に逃げ出してしまう最も大きな要因は医療環境。

仮に英語がある程度堪能でもそういう問題ではない。

英語、ビサヤ語、タガログ語がある程度話せる私でも頻繁に八方塞がりの絶望感に襲われる。

衣食住はある程度の経済力でお茶を濁せるが、医療レベルの低さとモラルのギャップは如何ともし難いものがある。

骨をうずめる覚悟で来たはずの移住者だが、いざ健康面への不安に直面すると途端にその決意が揺らぐものだ。

誰だってフィリピンで野垂れ死にしたくはないだろう。

たとえば、白内障の手術をしても術後の経過を懸念し、わざわざ一旦日本へ戻り専門の眼科へかかって再検査を受ける人もいる。

一体何のための医療なのか?!

しかも日本の何倍もの医療費を支払っても健康面の不安は払拭できない。

フィリピンにはアメリカで修行をした優秀なドクターがいるという情報を時々見かけるが、14年間現地で生活しそんな凄いドクターに出会ったことがない。

点滴の針もろくにさせないナースや古ぼけた検査機器を見ただけでそそれが幻想だと気づくだろう。

現地の保険は実質64歳迄で足切りされえ、それ以降も継続して入れる保険は年間20万円以上にもなり、しかも保証範囲も限定的となってしまうのだ。

日本の国民健康保険の3割負担に慣れていると医療費の直球に面食らってしまう。

実際、海外でも使える保険に入ってくる人は少ない。

物価に並んで医療費も安いと思い込んでいるのだ。

ちなみにコロナで1カ月入院し最後は死亡したが、遺族に1600万円の請求が来たケースもある。

 

フィリピンタイムにストレスが溜まる

日本人は時間に価値を見出すが、フィリピン人は時間に価値を感じないどころか時間を概念ごと否定したい人が多い。

たとえば私がかつてセブの大学で日本語を教えていた頃、オバサン教務部長から時々テキストメッセージで呼び出されることがあった。

「明日の朝オフィスに来て」

モトボサツ
何時に行けばいいですか?

「朝って言ってるでしょ?」

モトボサツ
だから何時なの?

 

つまりフィリピン人の多くは時間を固定化するのを嫌う。

無難に9時頃行ってみると誰もいない。

結局、悪びれることなく昼直前に現れるという始末だ。

ある程度フィリピンという世界が分かっているつもりの私でもこんな感じで振り回され憔悴してしまうことが頻繁にある。

ましてや移住してきたばかりの日本の常識をバリバリに期待している人にとっては信じられない世界。

 

「この前冷蔵庫買ったんですが、午前中に配達って言ったのに夕方迄待っても来ませんでした」

モトボサツ
それ普通とです。。。

 

早速の洗礼式だが、柔軟性のある若い人ならともかく、60年間以上も日本の常識を正義だと思って生きて来た人達には謎のフィリピンタイムを理解し受け入れることは無理だろう。

そうやって少しずつ見えないストレスが積み重なってしまう。

 

騒音に耐えられない

 

フィリピンタイムの次に耐えがたいものが騒音だ。

私が日本へ一時帰国するたびに感じるのは日本という国はとても静かな国であるということ。

まず公共の場で誰かを大声で呼ぶことをしない。

車道の路面状況も極めて上質で、車が走ってくるのが分からない程静かだ。

日本人が現地で住む建物は基本的にコンドミニアムとなる。

セキュリティがある程度しっかりしているという条件と、立地の利便性からしてそれ以外の選択肢はないだろう。

しかし、ほぼ100%苦情となるのが騒音。

盛んに響くジプニーやタクシーのクラクションやゴーっと音を立てて走るディーゼルエンジンの音が建物の上までガンガン響いてくる。

そして、夜10時を過ぎてもどこからともなく聞こえてくるカラオケの音。

上階や隣の部屋からの騒音もポピュラーな悩みだ。

フィリピン人は騒音を全く気にしないので耳が悪いんじゃないかと言う人がいるがそうではない。

お化けが大嫌いな人達は夜電気を消して寝るのが怖く、一人でいるとアスワンに襲われと怯える。

意図的に大きな音を立てて悪霊を寄せ付けないようにする風習があるようだ。

 

空気が悪過ぎる

セブ島の印象は美しい白砂のビーチで自然美を堪能できる印象が強いが、実は正真正銘、混沌とした東南アジアの一角なのだ。

日本でダメになったディーゼルエンジンがフィリピンにどんどん流れて来て、黒煙をまき散らしながら街中を走り回っている。

若い人ならともかく、抵抗力の弱くなったシニア層にとってセブ島の環境はかなり苛酷だ。

日本で一旦収まった喘息を再発させフィリピンを去るシニアもいた。

良くも悪くも50年前の日本だと言われる所以だろう。

 

まとめと考察

実は今回、フィリピン移住の闇について触れることに躊躇があった。

フィリピンの日本人社会は狭く、フィリピン移住者が減るような情報を暴露するときっと誰かに恨まれるだろう。

しかし、「フィリピンへ移住してみたが、聞いてた世界と全然違う、騙された!」と思う人が一人でも多ければ、それは結局フィリピン及びそこで商売をしている人にとってマイナスであると確信する。

出来れば後悔する人が一人でも少なく、納得した状態でフィリピンの良さを堪能しつつ余生を謳歌すべきだろう。

さて、ここまで散々フィリピンに移住したくなくなるような情報を書き連ねたが、最後にどんでん返し級の話で締めくくりたい。

フィリピン生活での最大の恩恵は人間同士の触れ合い。

日本のマンション暮らしだと、隣の部屋の人と口もきいた事がなければ目も合わせた事がないというケースが多いが、フィリピンでは目と目を合わせた人間らしい触れ合いがある。

私はそれを他人との垣根の低さと表現しているが、それがポジティブに働けば「人懐っこい」となり、ネガティブに働けば「借りた金を返さない人達」という形容がなされる。

 

 

その両方がフィリピン生活の醍醐味なのだ。

究極のところ、人生にとって最も大事な自己満足感。

日本だけで生活するよりはるかに経験値が上がり、良い事も悪い事も合わせ十分に生きた達成感を味わうことが出来る。

私は働き盛りの40代全てをフィリピン生活に捧げたが、死ぬ時の自己満足感だけは自信がある。

途中でフィリピン生活に耐えられず逃げ出したとしても、今度は今まで気付かなかった日本の良さをいちいち噛みしめながら生活することが出来るはず。

日々の生活の当たり前が当たり前でなくなる恩恵は最高だ。

最後に、フィリピンに骨をうずめる覚悟で来た人が本当に死にそうな目に合うと心が折れる。

そういう人を沢山見て来た。

実際、私の調査によるとフィリピンで生活しつつ72%の人が日本に戻れる場所を確保している。

 

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【独自調査】フィリピン移住者の72%が日本に戻れる場所がある

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フィリピンと日本の良い所どりをしつつ生活するのがベストだと痛感。

片道切符ではなく、寒い時期だけフィリピンで過ごす渡り鳥タイプのロングステイがおすすめだ。

そして、年に1度の健康診断を日本で受け、安心感を持ちつつフィリピンで自己満足度の高い人生を謳歌する。

私もそういう生活を目指しこれからもうひと踏ん張りしてみたい。

 

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モトボサツ

2年のセブ島ジャングル生活を経てビサヤ語を習得。その後タガログ語も同時に習得し、最後は英語という逆ばりメソッド。現在生命保険、医療保険コンサルおよびビジネス通訳を兼ねる。元セブの大学にて3年間ストリート系日本語教師の経験あり。

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