崩壊する秩序の覇者
私の住むマンダウエ市は幸いなことにGCQ(外出OK)という状況なので週に1度普通に買い出しに行ける。
聞くところによると、自動車やバイクのナンバープレートの末尾規制も既に「フィリピンあるある」的に自然消滅してしまっているようで指定の日以外に出かけても何も言われないようだ。
うちの場合、基本順路として客の少ない「高級スーパー ルスタンス」に行き、もしそこに買い物リストにある商品の在庫が無ければ「S&R(コストコもどき)」へ行くという流れなのだが、同じ思考を持った人が結構多くいるようで、「ルスタンス」で見かけた客が随分と「S&R」に流れて来ており、向こうもこちらをチラチラ見ていたりするのがいとおかし。
階級社会と言われるフィリピンだが、そうやって行動範囲の棲み分けも分かり易く出来ているのだ。
ところで、フルーツを買いたい時にはジェイセンターの中にある「SMハイパーマーケット」を利用している。
先日、セブがECQ逆戻りになった途端、マンダウエ市にも危機感が高まり普段ガランとしているスーパーにパニック買いの行列が出来ていた。
ティムはプレステージカードというプレミアメンバーカードを持っており、ちょっと偉そうな専用レーンで悠々と精算が出来るのだが、そのプレステージレーンにも長蛇の列が出来ていた。
セブの理想(左)と現実(右)
SMスーパーには「プレステージ」という上客様専用の特別レジが設置してある🎗️
しかし、コロナ渦極まるセブのレジは北斗の拳一歩手前状態に陥り プレステージカードの有無関係なく長蛇の列が出来ている😱#1時間待ち確定 pic.twitter.com/9yrr1TEYUc— モト ボサツさん@子供と成長中 (@motobosa02) July 2, 2020
私なら奴隷のように黙って最後尾に付くか、それともとっとと諦めて店を出るかの2択なのだが、ティムの行動は違った。
ツカツカとレジ打ちしているスタッフの所へ行きこう言い放った。
スタッフは素直に答えた。
「たぶん違うけど、もう既に沢山並んでるから仕方ないバ」
まさに期待通りの「セブアナあるある」的な返事だ。
しかし、状況に抗おうとしない生き方こそが幸福度を高める唯一のファクターだとキャツ等は教えてくれる。
諦めずに突っ込みを入れるティム。
大学時代にディベート大会で優勝したエグるようなトークがコロナ時代に生きるとは全く皮肉なものだ。。。
「マム、じゃあ、そこに割り込んで」
スタッフは手を使わず口先をまるで「ひょっとこ」みたいに尖らせて割り込むポイントを示した。
すると指定されたポイントの次に並んでいた太ったオバサンが物凄く慌ててこう言った。
「マーム、私の次に割り込んでよ~」
するとその後ろも同じく自分の後ろへ割り込めと言い始める。
拉致が明かなくなり、ティムは修羅場を離れサービスしないサービスカウンターへと向かった。
サービスカウンターのスタッフは慌てて目の前にあるワインショップのレジをティム専用に稼働させた。
セブ島コロナ渦の混乱でスーパーの「プレステージ専用レジ」が崩壊し長蛇の列‼️
カスタマーサービスにプレッシャーをかけ「ティム様専用」にワインコーナーのレジを開けさせる限りなく黒に近いグレーの交渉術😬#コロナ期の覇者 #ヤクザ式交渉術 pic.twitter.com/OpgeR9Qx2d— モト ボサツさん@子供と成長中 (@motobosa02) July 3, 2020
もし私が同じ行動に出ても同じ結果は得られていない自信がある。
少なくともプレステージのレジで割り込み権すら得ていないだろう。
サービスカウンターでもきっと「コロナだから仕方ないバ」と冷たく言われて2度目の撃沈のはずだ。
ティムの事を「メスライオン」と呼ぶのは対女性の白兵戦で一度も負けたことがないからだ。
私が苦手な限りなく黒に近いグレーの交渉術だ。
【回想】マダムvsティム
ワインショップでレジを独り占めしつつ余裕でフェイスブックに自撮り顔を投稿しているティムを見ながら走馬燈のように過去の出来事が記憶に蘇った。
家族でカモテス島へ出かける時に船着き場で少し待機していたのだが、突然ティムが「グトムコ(腹減った)」と言い出した。
日本人同士だと「島に着くまで我慢しようね」という穏やかな会話になると思うが、フィリピン人は腹が減ると頭痛が発生し途端に機嫌が悪くなる。
空腹のメスラインは私とカワイイちゃんを置いてセブンイレブンへと向かった。
二人でポツンと3人かけの椅子に座っていたのだが、ちょっと小太りの気取ったマダム風の女性がやってきた。
歳の頃はそおさのぉ40歳くらいか。
パークモール2Fで買ったと思われるシャネル風のサングラスをしている。
「ねえ、ここ空いてる?」
そう聞かれたので「ティム様が直ぐに戻ってくるからダメ」だと毅然と言い放ったつもりだったが、その気取ったマダム風の女性は「アンタたち少し向こうに詰めなさいよ」と言い無理やり座ってきた。
一瞬そう前向きに捉えそうになったが、それよりもティムが戻って来た時に絶対に揉め、この状況を許した俺が怒られるという流れがはっきりと頭に浮かんだ。
私とカワイイちゃんはソワソワしながらティムの戻りを待った。
そして向こう側にティム様がセブンイレブンの袋を下げて歩いてくるのが視界に入った。
ティムは私の隣に座っているオバPを視界に捉えながら顔が普通に怒ってる。
そして遂に第一ラウンドの火蓋が切られた!
ティムは少し早口だったが落ち着いていた。
不気味な余裕さえ感じる。。。
するとマダム風の女性は一言も発しないまま慌てて去って行った。
拍子抜け。
私はそんなティムを誇りに思うことは無く、冷たい敗北感に支配されたまま船内で少し凹んでいた。
特に同性に対して最強のティム様。
きっと昭和の日本に生まれていたら総長とかになっていた気がする。
とりあえずティムの持つ特性を最大限に生かしつつ、適度で安全な距離をキープしながらカワイイちゃんの母として尊重して行きたい。
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